2008年7月31日木曜日

東欧移民「約束の土地」アメリカへ-スリリングな自伝的物語





東欧移民「約束の土地」アメリカへ-スリリングな自伝的物語

『あこがれの大地アメリカへ』

著 者:ルイス・アダミック
訳 者:田原正三


 今世紀初頭、旧世界ヨーロッパの人々にとって、アメリカはまさしく黄金に輝く国、「約束の土地」であった。 第一次大戦前夜、14 歳の著者アダミックは故郷スロヴェニア(旧ユーゴスラヴィア)で汎革命的な「南スラブ人国家統一運動」の学生デモに参加する。しかし友人の少年はオーストリア兵に射殺され、彼自身も退学させられる。失意のなか、幼いころに聞かされていた「あこがれの大地 アメリカ」をめざす。こころに響く移民文学の傑作。原題『Laughing in the Jungle:The Autobiography of an Immigrant in America.,1932』から抽出翻訳書です。ルビ付きですので、児童でも読むことができます。

      我にゆだねよ
      汝の疲れたる 貧しい人びとを
      自由の空気を吸わんものと
      身をすり寄せ 汝の岸辺に押し寄せる
      うちひしがれた群集を
      かかる家なく 嵐に弄ばれた人びとを
      我がもとへ送りとどけよ
      我は 黄金の扉のかたわらに
      灯火をかかげん
 
      「自由の女神像」の台座に刻み込まれた
       ユダヤ人詩人エンマ・ラザルスの詩から。 

《電子ブックで読めます》

猫の本屋さん:作品の詳細紹介→購入画面

理想書店 


 翌朝、何もかもがふたたび静かになった。嵐は過ぎ去っていた。父と母には、純朴な人によくある子を思う親心ゆえの、いじらしさがただよっていた。僕が退学になったことと、その後神学校へ入るのをためらったことの彼らに与えた影響は、あの初夏のすさまじい雹の嵐で、わずか一瞬のうちにジャガイモや未成熟のトウモロコシが大部分駄目になったときと、まさに同じことだった。僕は雹の渦巻きに脅えている母の姿を見ていた。母は涙を流しながら、戸口から聖水をばら撒き、そして父は、母と呪文を唱えていた。しかし、いつしか嵐はすぎ、まるでうそのように太陽が顔をのぞかせると、母は泣くのをやめ、父は祈りと呪文をやめた。それから、二人は雹でやられた作物を見ながら、畑の中を歩いていた。僕も一緒に歩いた。母の悲しそうな表情が、突然、晴れ晴れとなった。「ほら、ここは雹の被害をほとんどうけていないわ。大目に見たんだね。まだ大きくなるわ」 母は父ににこっと笑みを浮かべ、それから僕にも笑みを浮かべた。「そうだな」と、父も頷いた。「こいつはまだ大きくなるよ」……。 
 翌朝、階下へ下りていくと、母が、「よかったね。父ちゃんが旅費をやるからアメリカへ行っていいってさ、気をつけて行くんだよ」とだけ言った。 

東欧移民「約束の土地」アメリカへ-スリリングな自伝的物語-電子ブック 
-Emigrants Ebook by Noted Immigrant Writer Louis damic
Copyright © Shouzou Tahara

《電子ブックで読めます》

猫の本屋さん:作品の詳細紹介→購入画面  

理想書店 


http://emigrants-statue-of-liberty-promisedl.blogspot.com/

東欧移民「約束の土地」アメリカへ-スリリングな自伝的物語-電子ブック
About the Author: 著者ルイス・アダミック著 翻訳田原正三
--------------------------------------------------------------
東欧移民「約束の土地」アメリカへ」(電子書籍) :
http://www.synapse.ne.jp/saitani/
-------------------------------------------------------------






0 件のコメント: